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宝来(加藤) 啓 執筆記事
 
 
 
『グリーン税制を例にした PDCA サイクルにおける Action の考え方』
(自工会、低公害車への自動車税の減税措置「グリーン税制」の延長を要望)

日本自動車工業会(自工会)「政府は、低公害車の導入を推進している立場。
個人ユーザーへの普及をはかるためには優遇税制はまだまだ必要」と減税措置
の延長を来年度税制改正要望の重点項目とする方針。

                 <2005年8月23日号掲載記事>

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 低公害車を対象にした自動車税の減税措置「グリーン税制」の適用期限が来
年 3月末で切れる。自工会側は減税措置の延長を求める一方で、総務省側では、
税収の低下を懸念し、減税措置の適用を限定するよう見直しを求めるとのこと
である。

 「グリーン税制」のおかれているステージは、企業経営における PDCA サイ
クルでいえば、税制を現在のままで継続するかどうか、内容を見直すかどうか
を検討する Action のステージといえるだろう。

 本コラムでは、「グリーン税制」を例として、PDCA サイクルにおける Action
の方向性を検討するためのプロセスや切り口について考えてみたい。

 最初にお断りしておくと、私たちはグリーン税制の延長に反対であるとか、
基準引き上げを支持するといった特定の立場や意見を表明するものではない。
あくまで企業経営において目標を設定して行動し、その成果をモニターする局
面でどういう行動を起こすべきなのかを考察するサンプルとして行政(企業経
営)を預かる官庁(経営者)の立場に一度立って考えてみようというものにす
ぎない。

【どういったPlanなのか】
 グリーン税制は、環境対策の一環として「2010年までに低公害車を 1 千万台
以上普及させる」ことを目標に導入された自動車取得税、自動車税(いずれも
都道府県税)の軽減措置で、排ガス量と燃費性能の一定基準を満たした新車を
購入すれば、購入時に自動車取得税が 20 万円〜 30 万円控除され、登録の翌
年度に限り自動車税が 25〜 50 %軽減される制度である。詳細を以下に記載す
る。

 上記の「一定基準」とは以下の 2 つの基準マトリックスのことをいう。

<排ガス基準>
 低排出ガス車認定制度のうち、2005年排出ガス規制値に対して以下(1)また
は(2)の基準を満たした自動車がグリーン税制の対象車となる。

(1)☆☆☆☆:2005年排出ガス規制値に対し 75 %低減レベルの自動車
(2) ☆☆☆:2005年排出ガス規制値に対し 50 %低減レベルの自動車

<燃費性能基準>
 2010年度燃費基準値に対して以下の(1)または(2)の基準を満たした自動
車がグリーン税制の対象となる。

(1)燃費基準達成車:2010年度燃費基準以上の自動車
(2)燃費基準+5 %達成車:2010年燃費基準を 5 %以上上回る自動車

<税金の軽減措置>
 軽減措置は排ガス基準と燃費基準のマトリックスにより以下の通りとされて
いる。

排ガス基準 燃費基準
☆☆☆☆  燃費基準+5 %達成車⇒自動車取得税 30 万円控除
                 自動車税 50 %軽減
☆☆☆☆  燃費基準達成車   ⇒自動車取得税 20 万円控除
                 自動車税 25 %軽減
 ☆☆☆  燃費基準+5 %達成車⇒自動車取得税 20 万円控除
                 自動車税 25 %軽減
 ☆☆☆  燃費基準達成車   ⇒軽減なし

【実行(Do)、および現状と問題(Check)】
 2002年から導入され、トヨタでは国内向けの生産台数(約 170 万台)のうち、
ほぼ 9 割、日産では、41 車種のうち 23 車種がグリーン税制適合モデルとな
っており、各自動車メーカーの対応は進んでいる。政府が掲げた「2010年まで
に低公害車を 1 千万台以上普及させる」という目標まで、2004年時点で残り
32 万台に迫っており、現時点での基準が継続すれば、前倒しで達成されるのは
確実であると見込まれている。(既に達成している可能性もある。)

 一見すると、自動車の環境対策は充分に進んでいるように見えるが、今年春
に発行された京都議定書目標達成計画には、現状として、運輸部門の温室効果
ガス排出量は増加傾向にあるとしている。(2002年時点では基準年(1999年)
に対し 20.4% の増加。) 自動車から出る排出量や燃費は下がったが、工場や
廃車から出る温室効果ガスが増えているのかもしれない。

 また、都道府県の税収減を引き起こしている。政府は、減税措置にあわせて、
新車登録から 13年を超えるガソリン車には自動車税を 10 %上乗せするなどの
増税措置も導入して税収減を防ごうとしたが、制度をスタートしてみると、低
公害車普及の勢いが圧倒し、減税と増税を差し引きした減収額は、2005年度ま
でに 9 百億円を超えているとのことである。

【そして Action の方向性】
<ゴールを見直す>
 制度導入から 8年で低公害車を 1 千万台という目標に対し、わずか 2年で
97 %を達成している。計画の前倒し達成は素晴らしいことではあるが、あまり
に早すぎる達成は、そこに投じられた費用や犠牲と効果がそもそも見合ってい
たのかという疑問を生じる。これは企業が事業計画や予算を策定する場合に置
き換えて考えるとよい。8年の長期計画達成のために他の優先課題を差し置いて
本社が助成金を付け、人員を優先配分した結果、2年で達成されたことを素直に
喜んでいいのだろうか。ゴール設定が甘すぎたか、リソースを配分しすぎたと
いう懸念が残る。

 このケースでは、ゴール設定を自動車業界側と擦り合わせる際に、自動車業
界側の意見を受け入れすぎたのかもしれない。現場の意見を積み上げ方式で目
標を設定するだけでなく、取り組み全体の中での位置付け(全体の中での経営
資源の使用量はどれくらいか)や、リスクテーキングに応じた経営期待値を提
示することなどが方向性になるだろう。

 例えば、京都議定書の運輸部門の削減目標のうち、燃費基準達成車の導入に
よる削減割り当てを増やすといったことや、もし、他部門の達成状況が悪けれ
ば、運輸部門の削減比率を高めるといったことも考えられる。こうした全体の
中での位置付けを確認することは、グリーン税制という取り組み自体の必要性
を見直すことにつながるだろう。

 また、ポスト新長期、ポスト 2010年規制などの新環境規制対応を見据えて、
排ガス基準であれば☆×6 レベルを新たに設けるといったような基準レベルを
上げることも検討し、より環境対応レベルの高い自動車に減税措置の対象を限
定することが方向性になるだろう。

<対象範囲(スコープ)を見直す>
 グリーン税制の対象となるかどうかを判定するための基準は、排ガス量と燃
費であり、自動車使用時の基準である。環境対策が目的とすれば、そもそも自
動車使用時だけの基準では不十分ではないだろうか。

 例えば、原料採取、生産、流通、使用、修理・メンテナンス、廃棄などライ
フサイクル全体での基準を用いスコープを拡大することが一つの方向性になる
だろう。燃費基準は高レベルで達成しているのに、生産、廃棄などの環境負荷
が高く、全体では並みレベル、もしくは、それ以下であったというのは、あり
えそうなお話だ。そこで、ポスト新長期、ポスト 2010年などの環境規制でも排
ガス量、燃費といった使用時の指標ではなく、ライフサイクル全体での指標を
用いることが考えられる。

 ライフサイクル全体で、どれだけ環境に負荷を与えたかを評価をする手段と
して活用されているライフサイクルアセスメントは、以前から各自動車メーカー
で進められており、トヨタでは「Eco-Vas」というシステムで実現している。た
だ、現状では、ライフサイクルアセスメントのモデルは標準化されていない。
もし、ライフサイクル全体での指標をグリーン税制と連動させようとするなら、
まずアセスメントの標準化から始める必要があるだろう。

<アプローチを見直す>
 低公害車の普及という目標に対して、減税という手法を用いることは、確か
に、買い手に訴求しやすいといった面はあるが、税収減等の副作用や、その他
の課題の取り残し等の問題が深刻なようであれば、他にも考えることができる。

 当初から、これは絶対に正しいというアプローチがわからるわけではないの
で、仮説・検証といったプロセスから、目標設定に対して妥当なアプローチを
模索していくことが必要だ。

 例えば、自動車メーカーに対する排出枠や低排出低燃費車生産台数目標の設
定、研究開発費の援助、低排出低燃費車の車検延長などがある。また減税の手
法を取る際にも、目標達成の困難さ(投資レベル)と減税幅のマッチングに工
夫の余地があるかと思われる。

【おわりに】
 今回はグリーン税制を取り上げて、企業経営における PDCA サイクルの特に
Action の方向性について考えてきた。ここから再確認できることは次の 3 点
が大事だということではないかと思う。

(1)Plan の達成具合を評価し、成功要因、失敗要因を分析すること
(2)次なる Plan が実行された後の成果、言い換えれば、ゴールを含めたスコー
プを明確にすること
(3)仮説・検証プロセスによりゴールを達成するための妥当な手段を検討する
こと

                        <宝来(加藤)啓>

 
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