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本條 聡 執筆記事
 
 
 
◆東京海上日動火災保険、新型自動車保険「トータルアシスト」を8月発売

  交通事故で入院した場合、契約者がその時の状況に応じて必要なサービスを
  選べる業界初の「入院時選べるアシスト」<特許出願中>などの新しい発想
  を取り入れた。入院時に選べるサービスには病室でのパソコンやDVDソフト
  のレンタルなどのほか、家事代行のホームヘルパー派遣、子供が入院した際
  に勉強の遅れを補う家庭教師派遣なども。対象は入院3日目から、日数に応
  じて最大180万円相当分まで。保険料は従来の自動車保険並みに据え置く

                    <2005年04月11日号掲載記事>


 一昔前まで、自動車保険は、どこの会社も条件が同じなら値段も大差なしと
いうのが当たり前の業界だった。しかし、1996〜 1998年の自動車保険の自由化
以降、各社の価格、商品の多様化が進み、今では「最大で 30〜 40 %安くなり
ます!」「1年間で数万円もお得!」「保険料は走る分だけ!」「業界初!〜を
導入」といった広告も TV や雑誌で溢れている。これまでと保険会社を切り替
えたというような人も少なくないと思う。

  自由化前は、大蔵省(現在の金融庁)の護送船団方式の指導方針によって、
外資の参入が厳しく規制され、自動車保険料率算定会という団体が算出した料
率の適用が義務付けられていたため、各社でほとんど値段に差がなかった。し
かし、1996年以降、大きな変化の時代に突入した。

  1996年 日米保険協議決着
       →外資に門戸開放。
  1997年 アメリカンホーム保険が通信販売開始
       →「リスク細分化型自動車保険」が解禁される。
  1998年 自動車保険料率算定会の料率適用義務が廃止
       →各社独自のデータに基づき保険料を設定可能になる。

  こうして 1998年には自動車保険は完全自由化に至ったが、これにより消費者
が得たメリットは大きい。保険料に大きな格差が生まれ、選択次第で節約も可
能になった。加入者の免許書の色や使用状況、対象車両の安全装備等、各種割
引制度も次々に商品化された。また、これまでの代理店経由の契約だけでなく、
通信販売やインターネットで加入することも可能になり、選択肢も広くなった。

  各保険会社の取り組みを紹介する前に、一般的な自動車保険の種類について
説明する。今更と思われる読者も多いと思う。しかし、損害保険料率算出機構
の調査によると、対人保険の加入率は、一般自家用車で約 77.6 %、軽自動車
では 63.3 %、バイクでは 35.8 %となっており、これ以外の人は自賠責保険
のみで運転しているのが実態である。自分自身が加入していれば何が合っても
補償されるというものではないので、改めて説明するとともに、自分の加入状
況を再確認してもらいたい。

1.自賠責保険(正式名称:自動車損害賠償責任保険)
  交通事故被害者の最低限の補償を確保するために、法律で義務付けられてい
  る「強制保険」。
  対象は「人」だけであり、限度額は、死亡(最大 30 百万円)、重度の障害
  (最大 40 百万円)、傷害(最大 120 万円)。
  自賠責保険の証明書を携帯(クルマに積載)していないと 30 万円以下、有
  効期限が切れていると 1年以下の懲役または 50 万円以下の罰金である。
  自動車では車検毎に義務付けられているので、これに加入していないことは
  ほとんどないが、250cc 以下のバイクは車検がないこともあり、7 %程度未
  加入だという。

2.任意保険
  自賠責保険がカバーしていない部分を補うために、個人の判断で加入する保
  険。一般的に「クルマ自体」に保険を契約する。

  (1)保険の種類
   ・対人賠償保険:
     人に対する損害賠償(自賠責を超える部分)を補償。無制限が一般的。

   ・対物賠償保険:
     他人の車やモノに対する損害賠償を補償。

   ・搭乗者傷害保険:
     同乗車に搭乗中の人に対する損害賠償を補償。

   ・自損事故保険:
     単独事故や相手の過失がない事故での運転手の死亡・傷害に対する補
     償。通常、対人賠償保険に自動的に付帯。

   ・無保険車傷害保険:
     相手が「無保険車」で十分な補償が受けられない時のための補償。

   ・車両保険:
     契約車両の損傷や盗難に対する補償。種類によりカバー範囲が異なる。

   ・人身傷害補償保険:
     同乗者の損害を無条件に補償。

  (2)セット
   上記の種類の保険をセットに組み合せて販売されており、主に以下のよう
   なものがある。

   ・PAP(自動車総合保険、Package Automobile Policy):
     対人、対物、搭乗者傷害、自損事故、無保険車傷害の5つのセット。
     示談交渉は対人事故のみ保証。(※一部対物も含む保険会社もあり。)

   ・SAP(自家用自動車総合保険、Special Automobile Policy):
     PAP+車両保険の 6 つのセット。
     対人、対物ともに示談交渉を保証。

   ・BAP(一般自動車保険、Basic Automobile Policy):
     加入者が(1)の種類を選択する「バラ売り」。
     補償、サービスの条件が限定されるため、あまり一般的ではない。

   ・総合自動車保険
     上記 SAP の拡張版であり、一般的に(1)の保険を全てカバーする完
     全補償型。各社それぞれ愛称を付けている。

  前述の一連の自由化前には、車種や運転者の年齢、事故歴などで保険料が自
動的に算出されたため、上記 (2) のセットの選択以上の自由度が消費者にはな
く、どこの会社でも大差がない、という結果になっていた。しかし、自由化以
降、外資保険会社が持ち込んだ「リスク細分型保険」と「通信販売」により、
自動車保険の自由度は急拡大を遂げる。

  リスク細分型保険とは、リスク(事故率と予想損害額)要因を細分化し、保
険料に差を持たせるものであり、保険業法の施行規則によると、年齢、性別、
運転歴、使用目的、使用状況(年間走行距離等)、車種、安全装備(エアバッ
グ、ABS 等)、所有台数、地域の 9 つのリスク要因で保険料に差をつけられる
ことが可能となっている。したがって、危険度の低い消費者は、割安な保険料
を享受できるが、危険度が高いと区分されてしまうと、割高な保険料となる可
能性もある。

  また、外資保険会社は、代理店による営業が主流であった国内保険会社に対
し、電話やインターネット等の通信販売という新たな販売網を持ち込んだ。こ
れにより、簡単に見積が取れるようになり、保険料見積比較サイトなども登場
したことで、消費者にとっての選択肢は大きく広がり、保険会社間の競争を激
化させた。

  こうして、保険料に大きな格差が生まれ、保険会社間の競争が激化したこと
で、他社との差別化、消費者にわかりやすい付帯サービス・独自の特約割引制
度が重要性を増し、各社のサービス内容の多様化が進んできた。

  自由化以降導入された特徴的な付帯サービス・特約割引制度の例としては、
以下のようなものがある。

   ・三井住友海上:  何年間か無事故の場合に、保険料の割引分を返還す
             る。事故時は、返還予定額から補償額分を減額。
   ・損保ジャパン:  広範囲の交通傷害事故補償や犯罪被害補償を付加。
             保険期間中でも、指定日以降に年齢条件を変更可能。
   ・アクサ損保:   通販による本格的リスク細分型バイク・原付保険。
             業界で最初にゴールド免許割引を導入。
   ・ソニー損保:   走行距離に応じて算出。
             前年走らなかった分は翌年に繰越可能。

  全般的には、外資・通販系保険会社がリスクを細分化することで価格メリッ
トを打ち出す傾向にあるのに対し、国内大手保険会社は補償・サービスを拡大
することで、安心感と顧客メリットを打ち出す傾向にある。

  今回の東京海上の新商品も、補償・サービスの拡大という方向性は、これま
で同様であるが、既存領域に留まらないサービスを付加しており、同社の発表
では、自由化前(第 1 世代)、自由化後(第 2 世代)に続く、第 3 世代の商
品と位置付けている。

  特に、入院時の補償内容を顧客のライフスタイルにあわせて専用のサービス
デスクに相談しながら選択できるという「入院時選べるアシスト」は、保険金
の支払に留まらないサービス提供を提案しており、「なぜ保険金が必要になる
のか」「なぜ保険に加入するのか」「保険金をどう使うのか」という消費者の
立場に帰って考えた商品だと言える。

  生命保険会社や警備会社も参入している一方で、国内市場の伸びは鈍化して
おり、保険会社にとっては、今後も厳しい競争が続くと見られる。しかし、消
費者の立場で見れば、サービスの多様化が進み、商品選択の幅は確実に広がっ
ている。今後も、過去に囚われない、驚くような商品の登場を期待したい。

                          <本條 聡>

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