◆第38回東京モーターショーが開幕、一般公開は3日から7日まで
「働くくるまと福祉車両」をテーマに日米欧6カ国の113社などが280台を出
展。東京モーターショーは、1999年から乗用車と商用車の交互開催だった
が、集客の問題などで再び統合することになり、最後の商用車単独開催に。
<2004年11月02日号掲載記事>
先週、第 38 回東京モーターショー 2004 が、「働くくるまと福祉車両」と
いうテーマで開催された。読者の方々も多数足を運ばれたと思う。
前回は、「進化の予感。働くくるまのスタジアム」というテーマで、トラッ
ク・バスなどの商用車やそれを支える環境・安全・ ITS 関連技術等が中心を担
っている感があったが、今回はテーマにも加えられた通り、福祉関連の展示が
特に充実したのが特徴であろう。実際、展示車両は、商用車が 136台であった
のに対し、福祉車両は 206台だったと報道されている。
商用車だけでは集客力・アピール性に乏しいので、注目を集めやすい新型乗
用車を出展するために、福祉車両仕様にして出展しているのだろうというよう
な穿った見方をする方もいるだろう。しかし、一言で福祉車両仕様といっても、
一昔前からあるような助手席が回転するタイプのものだけでなく、各社様々な
技術を盛り込んでいることに注目すると、単に集客効果や企業イメージ対策だ
けではないと思えるのではないだろうか。
今回の福祉車両の展示において、大きく二つの傾向が見られた。一つは「乗
降性能の向上」、もう一つは「運転する楽しさ」である。
まず、乗降性能という点だが、車イスからの乗り降りする際の負担を軽減す
るために、助手席や後部座席(ミニバン等)の座席が回転に加えて昇降するタ
イプのものが数多く増えた。ミニバン等においては、スライドドアによる広い
開口部を有効活用して、シート動作の自由度が広げられているものもいくつか
見られた。
更に、トヨタ、ダイハツ等では、乗り降り動作の軽減のために、クルマ自体
のシートと車イス自体を一体化させ、電動リフト等と組み合せることで、クル
マの中では「シート」、クルマから降りると「車イス」となるコンセプトカー
も出展されていた。これならば、介護者がいなくても乗り降りが可能となるも
のである。
運転する楽しさという点では、障害者が運転するための自操式と呼ばれる福
祉車両のラインナップが拡充されていたことが注目すべき点であろう。従来、
自操式の中心であったコンパクトカー、セダン等だけでなく、軽自動車、ミニ
バンやスポーツカーまで数多くの自操式仕様のクルマが展示されておりいた。
また、両足が不自由な障害者のための、両手のみで運転するタイプの自操式
車両が主流であるが、ホンダは、両手が不自由な障害者のための、両足のみで
運転するシステムも発表しており、障害者の立場を考えた開発が進められてい
る一例と言える。
こうした福祉車両出展の充実の背景には、国内の高齢化問題がある。ここ数
年来、福祉車両の需要は着実に増加している。自動車工業会の発表によると、
1997年度には福祉車両全体で 12 千台程度であったが、2003年度には、44 千台
(前年比 16.5 %増)まで拡大している。
国内の四輪車総需要(2003年度 587 万台)から比べると、1 %にも満たない
が、10 万台弱である中大型車と比べると、各自動車メーカーにとっては、決し
て無視できる市場でないことがわかる。
現在、助手席回転シートについては、国内乗用車メーカー 8 社が全て商品ラ
インナップを揃えており、障害者が運転するための運転補助装置付のクルマに
ついても、5 社が仕様を設定している。今後は、対象車種の充実とともに、機
能面での差別化も進むと考えられる。
今回のモーターショーの会場において、実際に車イスで来場されている方も
多数見かけられた。来年以降、再び乗用車の出展と統合されると報道されてお
り、福祉車両の出展も縮小せざるを得ないと考えられる。しかしながら、こう
した障害者の方々が、ゆっくり各社の車両・技術を体感できるような機会は、
どこかに確保してもらいたいと希望する。
<本條 聡> |