◆ヤマハ発、ITS 世界会議に250ccスクーター「ヤマハ ASV 」を参考出品
「グランドマジェスティ」をベースに、ライダーの死角領域をCCDカメラで
撮影し、メーターパネルに設けたモニターに映し出す「後方視界補助システ
ム」や専用ヘルメットに内蔵したスピーカーとマイクで「Bluetooth」を用
いて道路環境情報を得たり同乗者との会話が行える「HMIシステム」、
カーブを走行する際に車体の傾きに応じてヘッドライトの照射角度を変える
「夜間ライティングシステム」「コーナリングライト」などを採用している
<2004年10月18日号掲載記事>
先週、第 11 回 ITS 世界会議が名古屋で開催された。今回は、「飛躍する移
動−ITS for Livable Society」というテーマが掲げられおり、暮らしやすい社
会につながる技術という視点で、自動車メーカーから大学まで様々な発表、展
示が行われた。
これまで、ITS を初めとする自動車業界の先端技術開発は、技術の高度化が
重視されたプロダクトアウト型の傾向があり、市場のニーズや利用者の立場が
軽視されがちとの批判もあった。今回は、テーマの設定からも、利用者の視点
でマーケットイン型の技術開発を志向しようという意図が読み取れる。
今回は、久々の日本での開催、しかも、トヨタのお膝元であり、来年には愛・
地球博を控えた名古屋での開催ということで、トヨタやデンソーをはじめとす
るトヨタグループ各社の展示には、特に力がこもっているように感じた。
ITSが目指す将来の自動車社会の重要な要素として、「安全・安心」「環境・
効率」「快適・利便」の3つの分野が挙げられることが多い。
(1)安全・安心
衝突時の安全と事故の予防安全への対策を高度化することにより、交通事
故死傷者の減少を目指す。
政府方針では、10年間で 5 千人以下に減少させることを出されている。
主なテーマとしては、ASV (先進安全自動車)、ISA (速度制御支援シス
テム)など。
(2)環境・効率
自動車単体の環境性能の向上に加え、公共交通や道路交通管理を含めた観
点で適正化・効率化を進め、環境負荷の軽減を目指す。
全国の交通渋滞による経済損失は年間約 12 兆円と言われており、将来的
には、渋滞のない理想的な社会を目指す。
主なテーマとしては、LRT (高性能新交通システム)、カーシェアリング
など。
(3)快適・利便
エレクトロニクス技術や情報通信技術により、誰もが快適で楽しく意のま
まに移動できる社会環境の実現を目指す。
運転者への情報提供等の「個人」の利便性と、公共交通やインフラなどの
「地域」の利便性の 2 つに分けられる。
主なテーマとしては、ETC (自動料金収受システム)、VICS (道路交通情
報通信システム)など。
これらの分野の中でも、近年商品化が進み、消費者への認知が広がりつつあ
る、ASV に関する技術は、注目が集まるものの一つであろう。ASV とは、エレ
クトロニクス技術等の新技術により、安全性・快適性を格段に高めた自動車の
ことであり、ITS の分野においても中核技術の一つと位置付けられている。
ASV プロジェクトは、国土交通省を中心に産官学連携で進められており、現
在は第 3 期(2001〜 2005年)として「普及促進のための検討」というテーマ
で研究開発が進められている。
ASV 技術としては、障害物の検知、危険回避、運転手の危険状態(いねむり
等)の防止等多岐に渡り、これらの技術が実現し、全ての車両に普及する社会
となれば、死亡・重傷の交通事故は約 4 割程度削減できると予測されているも
のである。
今年に入ってから、国内高級車市場は各社の新型車投入により、大きな注目
を集めている。昨年末に市場投入されたトヨタ・クラウンに加え、今月、日産・
フーガ、ホンダ・レジェンドと、国内大手自動車メーカー 3 社の新型主力高級
セダンが揃い踏みとなった。これらの車には、他車への優位性をアピールする
ために、各社の先進技術が導入・設定されている。
その中でも、大きなアピール材料となっているのが、衝突安全確保や障害物
回避といった ASV 技術であり、自動車メーカーだけでなく、大手自動車部品サ
プライヤーも絡めて、開発競争が加速している。
消費者の注目度や、先進的技術の大きな課題である高コストを吸収する商品
という観点から、乗用車、特に各自動車メーカーのフラッグシップモデルとな
る高級車に焦点を合わせた開発・商品化が進められることは当然である。しか
し、ITSが将来的に理想のクルマ社会を目指し、その実現の大きな柱の一つであ
る ASV 技術という観点では、乗用車よりも安全性が問題となる二輪車や大型商
用車での技術開発も非常に重要なテーマである。
そういった意味でも、今回のヤマハが発表した ASV 技術を導入した二輪車に
は、大きな期待をしたい。今回発表されたヤマハ ASV には、以下のような技術
が搭載されている。
(1)二輪車用HMI(Human-Machine Interface)システム
カーナビや車両情報を表示するディスプレイと、Bluetooth による無線通
信機能を内蔵し、カーナビ音声や同乗者間の会話などを可能にするヘルメ
ットによる、快適性を向上させた HMI。
(2)二輪車用夜間ライティングシステム
ステアリングと連動するコーナリングライトを搭載。乗用車の AFS
(Adaptive Front Lighting System)と同様の機能。
(3)二輪車用後方視界補助システム
ウィンカーと連動し、後方 CCD カメラで捉えた死角の映像をディスプレイ
に表示する機能。
乗用車の先進技術と比較するとインパクトにかける内容と思われるかもしれ
ない。しかし、乗用車と異なり、国内の市場規模も小さく、空間・機能的な制
約も大きく、また購買層の趣向(安全な移動手段というよりも運転を楽しむ目
的が大きいことが多い。)ことを考えれば、なかなか乗用車と同等の技術を導
入することは難しいことはご理解頂けると思う。だからこそ、この分野での先
進技術開発の意義や二輪車の将来の方向性に与える影響も大きいのではないか
と考える。
今回の ITS 世界会議では、ヤマハだけでなく、他のメーカーも様々な先端技
術を展示していた。こうした技術を、開発者の視点だけでなく、消費者の視点や
社会への貢献という視点で見てみると、新たな側面に気付かされることも多い
ではなかろうか。
<本條 聡> |