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本條 聡 執筆記事
 
 
 
◆ブリヂストン、電気自動車向けインホイール・モータを改良

 昨年9月に発表した「ブリヂストン・ダイナミックダンパータイプ・インホ
 イール・モーターシステム」を改良した「バージョンII」を発表。システム
 自体の小型・軽量化、モータ作動ストロークの拡大、防水・防塵対策の実施
 で実用化により近づけた。カヤバ工業、曙ブレーキ工業との共同開発。

                   <2004年09月17日号掲載記事>

 将来のクルマ社会を考える上で、環境負荷が低い燃料電池自動車を始めとす
る電気自動車への期待は大きい。その電気自動車の理想的な駆動方式の一つと
して注目されているのが、ホイール自体に駆動モータを組み込む、このインホ
イールモータシステムである。

 過去インホイールモータシステムを搭載した電気自動車の代表例としては、
1991年に東京電力が開発した4輪駆動の電気自動車「IZA」や、1997年に国立環
境研究所が中心となって開発した後輪2輪駆動の電気自動車「ルシオール」、
2001年に慶応大学が開発した8輪駆動の電気自動車「KAZ」などがある。

 また、あまり知られてはいないかもしれないが、建機の分野ではかなり前か
らインホイールモータシステムを採用したハイブリッドシステムが実用化され
ている。コマツは、1979年より鉱山等で使用する 120t 積みの大型電動ダンプ
トラックを販売してきた。ディーゼルエンジンで発電機を駆動し、その電力で
駆動するシリーズ型ハイブリッド車だが、これにもインホイールモータが採用
されており、現在も北米を中心に販売されている。

 インホイールモータシステムの主な特徴として、以下が挙げられる。

 <メリット>

  (1)運動性能の向上
   ・動力源であるモータがホイール自体に内蔵されているため、動力の伝
    達効率が高い。
   ・モータが各駆動輪毎に搭載されるため、応答性の良い4輪独立制御が
    可能。

  (2)居住性、車体設計自由度の向上
   ・ドライブシャフト、デファレンシャルギア等が不要となり、従来駆動
    系部品が占有していた空間を利用できるため、車体設計自由度が向上
    し、居住空間の拡大も可能となる。

 <デメリット>

  足回りの重量(バネ下重量)増加は避けられず、乗り心地の悪化や、タイ
  ヤ接地性の低下による走行安定性の悪化などが発生してしまう。

 メリットが大きく、将来性への期待も大きいが、バネ下重量増加によるデメ
リットが、実用化への大きな課題となっている。ブリヂストンが発表した技術
は、このデメリットを解消するためのものである。

 ブリヂストン・ダイナミックダンパータイプ・インホイール・モーターシス
テムと呼ばれるこのシステムは、モータ自体が振動を吸収する装置であるダイ
ナミックダンパーとして機能するため、バネ下の振動をモータの振動が相殺す
ることで、バネ下重量増加によるデメリットを解消するものである。これによ
り、他の電気自動車の駆動システムよりも乗り心地とタイヤの接地性を向上さ
せることが可能となる。

 このブリヂストンのインホイールモータシステムは、昨年9月に発表された
ものだが、今回発表されたものは、この進化版のバージョン II である。この
バージョン II では、実用化に向けて、小型・軽量化、モータ作動ストローク
の拡大、防水・防塵対策が改善されている。

 ブリヂストンによると、今回の進化版は、カヤバ工業と曙ブレーキ工業との
共同開発により実現したとのこと。3社は、2000年より、足回りの共同研究に
おいて技術提携している。

 この自動車部品メーカー主体の技術提携、共同研究についても注目したい。
こうした自動車部品メーカー主体の技術開発は、自動車業界全体の技術革新を
活性化するものと考えられるからである。

 自動車業界においては、すぐ実用化、量産化しないような長期的な技術開発
は、そのほとんどが自動車メーカーが主体となって提携関係を結ぶケースが多
い。今回のように、自動車メーカーが不在で、次世代技術の研究をするケース
は稀である。

 勿論、今回の技術についても、将来的には、自動車メーカーの存在は不可欠
であろう。実用化されるまでには、信頼性試験や熱、水、ほこりや振動などに
対する耐久性試験が必要であり、また駆動モータを制御するインバータ装置の
開発や他の電子機器への影響の検討、故障時の安全性の確保など、研究課題も
多く、自動車メーカーの協力が必要となることは間違いない。

 一方、弊社が6月に自動車メーカーに勤務している人を対象に行ったアンケー
ト調査によると、自動車部品メーカーに今後いっそう強化してすべきと考えて
いる項目のトップは、「ブランド力・商品力を高める先端技術や R&D」であり、
半数強の回答を占めていた。つまり、部品メーカーに対しては、何よりも開発
力の強化が求められていると言える。

 自動車メーカーとしても、その開発リソースには限りがあり、何から何まで
全部自分でやることは事実上不可能である。こうした中で、短期的な改善だけ
でなく、将来的な先端技術の開発も手掛ける部品メーカーは、歓迎されること
は容易に想像される。

 自動車業界という視点でみても、今回の場合、インホイールモータシステム
を採用した電気自動車の実用化を近づけるというような直接的な貢献だけでな
く、この技術を前提にした自動車メーカーによる他の分野での技術革新への応
用や、刺激を受けた競合他社による競合品の技術開発などにより、自動車業界
全体の活性化を促すことに繋がるのではなかろうか。

 ブリヂストンは、そのプレスリリースの中で「車社会の発展への貢献」を使
命に掲げており、まさに本領発揮と言えるが、他の自動車部品メーカーにも、
先端技術開発による車社会の発展への貢献を切にお願いする。

                        <本條 聡>

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