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本條 聡 執筆記事
 
 
 
◆ホンダ、衝突回避を支援する電動パワーステアリングシステムを開発
 ミリ波レーダで前方を監視するプリクラッシュセーフティシステムを活用

                   <2004年08月26日号掲載記事>

 自動車の電子化の流れの代表的なものとして挙げられることが多いのが、電
動パワーステアリング(EPS:Electric Power Steering)である。近年、モデ
ルチェンジを機に採用される車種が確実に増えてきている。

 これまで、パワーステアリングの主流は油圧パワーステアリングであった。
EPSは80年代後半から量産されているが、その採用は軽自動車、小型車等に限
られてきた。常時油圧ポンプを回すことで操舵力をアシストする油圧パワステ
に比べ、燃費向上等の優れた特性をメリットが高いことは知られているが、操
舵感が良くないと評されることが多く、中大型車、高級車で採用されることは
稀であった。

 EPS の主なメリットは、以下の通り。その可能性や将来的な期待は高い。

 (1)燃費向上への貢献
  EPSでは、油圧ポンプが不要なため、操舵時以外のエネルギー損失が低減
  できるため、燃費改善が可能となる。メーカー・車種にもよるが、5%前
  後の燃費改善効果があると言われる。

 (2)軽量化
  油圧ポンプ他、油圧系統の部品が不要となるため、軽量化にも貢献する。

 (3)組み立て・調整の簡易化
  油圧系に比べ、組み立て・調整が簡略化でき、リサイクル性にも優れる。

 (4)セッティングの変更が容易
  電子制御プログラム等の調整により、操舵感をはじめ、セッティングの変
  更が容易となる。国内でも販売を開始した独VW社の新型ゴルフでは、グレ
  ードに合わせて、複数の異なる電子制御プログラムを用意している。

 (5)ハイブリッド電気自動車(HEV)にも有効
  HEVでは、アイドリング時など、エンジン停止時にもハンドル操舵するこ
  とが要求されるため、油圧ポンプが不要なEPSが有効となる。現在発売さ
  れているほとんどのHEVにおいて、EPSが採用されている。

 近年、燃費に対するユーザーの意識の高まりや、モーターおよびその制御技
術の向上による操舵感の改善に伴い、トヨタのクラウン、ホンダのインスパイ
アなどの高級車や、マツダのRX-8、ホンダのS2000といったスポーツカーをは
じめ、EPSを採用する車種、セグメントは確実に広がりつつある。

 しかし、昨年あたりから、EPSの新たなメリットを活用した技術が注目され
てきている。電子制御を利用した、自動化の流れである。EPS は、モーターの
駆動力でハンドル操作をアシストするが、このモーターの制御プログラムに、
新たなシステムとの連動性を加えることで、新たな機能を実現しようというも
のである。

 現在の自動車メーカー各社の技術革新の方向性は、確実に、将来、自動運転
を実現することを視野に入れている。ステアリングについても、ステア・バイ・
ワイア(完全な電子制御によるステアリングシステム)、そして自動操舵とい
う方向を目指しており、自動車の安全性・利便性向上を実現しようとしている。
その流れからも、EPS の電子制御という特性を活かし、他のシステムと連動さ
せることで自動車の新たな機能を実現する新技術は、今後も増えてくるであろ
う。

 昨年、トヨタが現行プリウスを発売した際、「インテリジェントパーキング
アシスト」と呼ばれる、縦列駐車・車庫入れの際の操舵を自動で行うシステム
が注目を浴びたことは記憶に新しい。プリウスには、これに加え、カーブで車
両が滑り出しそうになったときに、車両が安定する方向にアシストする力を自
動で加えるS-VSC(Steering-assisted Vehicle Stability Control)と呼ばれ
るシステムも搭載されている。従来のVSC(車両の横滑り等を防止するために
ブレーキやエンジンの出力等を最適制御し、安定させるシステム)にEPSを連
動させた世界初のシステムである。これらの技術は、EPSが搭載されているか
らこそ実現可能になった技術である。

 今回ホンダが発表した技術も、同社がすでに現行インスパイア等にて既に量
産しているプリクラッシュセーフティシステムに、VSC(上記参照。ホンダで
はVSAという)やEPSによる操舵制御を加えたものである。衝突回避のために、
衝突の検知、警告からブレーキ制御までを行うものがこれまでのものだが、今
回の技術では、これにステアリング制御による回避が加わった。

 これまで、EPS は操舵感が議論の焦点になることが多く、操舵感向上によっ
て、燃費改善といった環境性能と運転する楽しみを両立させることが課題とな
ってきた。EPS だけに限らず、欧州車と比べて、日本車は操舵感を始めとする
クルマとしての基本的な運転性において、まだまだ熟成が足りないという意見
する評論家の先生も少なくない。

 もちろん、この操舵感に対する技術革新も進めてもらいたい。しかし、微妙
な操舵感よりも、わかりやすい安全性、利便性を志向する消費者が多数いるこ
とも事実として認識しなくてはならない。将来的な自動車の方向性やそれに向
けた技術革新を考えると、EPS によって可能となる新たな機能、付加価値を実
現し、安全性・利便性の向上させることが更なる普及にも繋がると考えられ、
その普及につれて操舵感の面でも地道な改善が期待できるのではなかろうか。

                        <本條 聡>

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