『「買ったらすぐ使いたい」、の当たり前の感情を満たして需要喚起に繋げる』
◆自販連、新車販売低迷で「車に関する税金の簡素化などの対策が必要だ」
「税制の抜本的な見直しなどがない限り増加はない」
<2007年07月02日号掲載記事>
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ご存知の通り、国内の新車販売が低迷している。
自販連の発表では登録車(軽自動車除く)は月ベースで 24 ヶ月連続の減少
となっている。
また、上半期(1〜 6月)の台数も 178 万 8,440台と、1977年上期(174 万
2,109台)以来 30年ぶりの低水準とのことだ。
【本コラムにおける主張】
筆者はこのコラムで、
1.自動車という商品が一般の消費財と異なり、購入プロセスにおいてお客様
とのコミュニケーション戦略を考えようにも、構造上柔軟性を欠いているこ
とを述べたうえで、
2.お客様の感情の高まりに迅速に対応可能とする販売時のインフラとして、
(1)登録プロセスの簡素化と
(2)即納体制の構築
の 2 つを実現することで、
国内の自動車需要喚起に繋げる動きを官民一体となって実施すべきであるとい
う主張を述べる。
【取り上げた記事の概要】
記事では、冒頭述べた登録車の低迷に加え、これまで好調であった軽自動車
もここに来て 4年ぶりに減少したことを紹介している。
景気が回復しても自動車販売が低迷している理由として、個人消費に大きな
改善がみられないこと、更に耐久消費財の自動車への出費が家計の中で後回し
になっていることを挙げている。
更に、自販連広報部のコメントとして「税制の抜本的な見直しなどがない限
り増加はない」という話を紹介している。
【自動車に関わる諸税】
確かに、日本における自動車に関わる諸税は高い。
消費税と自動車取得税が二重で掛かることに加え、毎年払う自動車税、車検
毎に支払う重量税、細かく言えば印鑑証明取得のための費用に車庫証明取得の
費用、住民票取得費用、登録の際に掛かる印紙税などなど。
自販連の HP には、
(1)排気量 1,800cc
(2)車両重量 1.5t 未満
(3)車体価格 180 万円
(4)米国はニューヨーク市
(5) 11年間使用(平均寿命)
という前提で諸外国の自動車に関わる諸税と比較して 2 倍〜 21 倍も高いこと
が掲載されている。(下 URL ページの一番下に、日、米、英、仏、独の比較表
有り。)
https://www.jaf.or.jp/enquete/signature/200601sig_index.htm
具体的な額で言えば、例えば米国は 自動車保有 11年で税金が 19.8 万円掛
かるところが、日本では 81.4 万円と 60 万円以上高い。
保有に関わる費用は、国のインフラ事情や国土に対する車両数など複雑な要
因が絡まるため、単純に高い・安いと判断は出来ないものの、日本の自動車ユー
ザーは多額の税負担を強いられている為、この税負担額を減らすことによる需
要喚起も一つの方法であろう。
ただ、筆者はこれに加えて、自動車購入の際の手間と購入決定から使用開始
までのリードタイムを短くすることと、これを可能にする納税体制や登録面な
どのインフラ改善も重要であると考える。
【感情の高まりに合わせたマーケティングの必要性と制約】
可処分所得が 100 として、これを何に費やすかの優先劣後の議論で、携帯電
話やその他商品に自動車購入が劣後しているというのは良く聞く仮説である。
単純に 100 万円の車を 36 ヶ月払いすると 1 ヶ月 3 万円弱の支払だが、ユー
ザーはこれより携帯電話料金の月々 3 万円を優先するということであるが、今
回取り上げた記事もこれに似た内容になっている。
ここで注意したいのは、一般の商品は消費者が欲しいと思ったらその時点で
手に入れることが出来るものが殆どであることだ。
デパートでカバンや靴を買う、大型電化製品店でテレビやパソコンを買う、
乃至は上で述べた携帯電話を買うにしても、お客が欲しいものを欲しいと思っ
た時点で購入→即座に使用を開始できるものばかりである。しかし、自動車に
限ってそうはいかない。
仮に車が欲しいという気持ちが盛り上がってディーラーに行ったとしても、
その場で購入→当日から商品を使用できるということにはならない。
これはそもそも新車であれば全ての商品ラインナップの現物がディーラーに
無いこと、更に、仮に在庫があったとしても、登録諸手続きが必要であり、登
録に必要な書類(印鑑証明や車庫証明など)を別途市役所や警察署で手配する
必要が生じることに起因する。
よって、お客様が興味を持ってお店に来ても、営業員が出来る最大限のこと
は見積書提示に基づく注文書の獲得である。
商品を購入して使用している自分をイメージする気持ちが盛り上がっている
状態にも関わらず、書類の完備に長々と時間がかかり、商品の到着そのものに
も時間が掛かるとなると、お客様は取り合えず「また来ます」となってしまう
であろう。
その間、別のお店を回って別の車を購入するならまだしも、例えば上記デパー
トなどで欲しいものがその時点で手に入るのであれば、「いろいろ面倒だし、
お金も限られてるから、車は今度でいいや、代わりにxxを買おう」となって
いる可能性がある。
他商品に自動車の購買が劣後しているとすれば、このプロセスの手間が総需
要に影響を与えている可能性はあるだろう。
【AIDMAの断絶】
マーケティング用語で AIDMA という古典的な考え方がある。
(1)製品の存在を認知し(Attention)
(2)興味を惹かれ(Interest)
(3)欲しいと思い(Desire)
(4)購買の動機を求め(Motive)
(5)最終的に購買行動に至る( Action)
という消費者の購買決定プロセスだが、このうち、Attention を認知段階、
Interest、Desire および Motive を感情段階、Action を行動段階と区別する。
マーケティングでは、顧客の状態に応じたコミュニケーション戦略をとるわ
けだが、自動車の場合店頭において(1)〜(4)までの感情段階を盛り上げた
としても、最後の(5)に来る行動段階が断絶してしまう。
即ち、購入プロセスにおいてお客様とのコミュニケーション戦略を考えよう
にも、構造上柔軟性を欠いており、大きな制約条件となっている。
【欲しいときに直ぐ手に入るを実現するためには】
諸外国との差は税負担額だけでなく、登録制度やディーラーにおける在庫状
況にもある。
例えば米国の場合、極端な話をすればディーラーで選んだ車をその日に乗っ
て帰ることが出来る。
そこで筆者は、お客様の感情の高まりに迅速に対応可能とする販売時のイン
フラとして、
(1)登録プロセスの簡素化と
(2)即納体制の構築
を提案したい。
(1)の登録プロセスの簡素化は、積み上げベースで必要な書類から考えてい
くと、印鑑証明、住民票・駐車場使用許諾所・車庫証明書、実印による押印な
どなど複雑に絡み合い、難しい問題ばかりが目に付く。
しかしユーザーの目から見れば、国土交通省や警察署への管理書類の提出は
車に乗る喜びとはまったく異なるものである(所有者の財産を守るなど、大切
な手続きであることは間違いないが)。
一昔前のアップルコンピュータ製 PC の iMac はデザインで有名になったが、
実は当時面倒だったインターネット設定やプリンタ設定などなどが全て事前に
プレ・インストールされていて、買ってきて箱を空けたら直ぐに使えるという
ことがユーザー獲得に繋がった大きな要因であった。
同様のプロセスの単純化を実現するために、登録プロセスを簡素化し、車を
買いたいときにはその日に登録が完了して引渡しに至ることが出来るようなイ
ンフラを構築することを業界として目指してはどうだろうか。
その意味では、自販連が提供しつつある OSS などはこの方向への第一歩であ
るが、既存顧客の必要書類を全て管理するような第三者サービスなどをメーカー
各社が連携してサービス提供するようなことも効果的であろう。
同様に(2)の即納体制についても、在庫を抱える体力を有しない平均的ディー
ラー(一般的に経常利益率は 1〜 3 %程度である)に成り代わりメーカー単位
での即納を実現する資金面のサポートと物流網の構築を実現することが肝要で
ある。
【自動車と携帯電話・ AutoMobile vs. MobilePhone】
自動車と携帯電話。
実は両方とも同じ Mobile (モバイル・モービル)という言葉がつく。
Mobile は移動や機動という意味で、自由に動くことをあらわす。
人間の根源的欲求である「移動すること・機動性」を満たすという意味で両
商品は共通しているが、「購入時の機動性」は大きく異なる。
携帯電話が世に出てきた頃は、申し込みから登録、その他にかなり時間が掛
かっていたが、今では機種変更は当日のうちに直ぐに可能である。
自動車でも、買換えの際には当日のうちに完了するといった機動性を確保す
ることが、名実共に自動車を Automobile と化し、結果として限られた可処分
所得を携帯電話に奪われることを食い止めることに繋がるのではないだろうか。
<長谷川 博史>
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