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長谷川 博史 執筆記事
 
 
 
◆ヤフー、Yahoo!オークションの自動車カテゴリなどで、利用料を大幅値上げ

 自動車車体・バイク車体・トラック車体・バス車体・不動産の特定5カテゴ
 リのシステム利用料を21日から変更すると発表した。自動車車体とトラック
 車体では出品システム利用料が525円から2,940円に、落札システム利用料は
 3,150円から2,940円となる。3月21日から6月20日までの落札終了分を対象と
 して落札利用を無料にするキャンペーンを行なう。

                   <2005年03月16日号掲載記事>

 インターネットポータルサイトのヤフーのことは今や殆どの人がご存知だろ
う。スタンフォード大学の学生だったジェリー・ヤンとデビッド・ファイロが、
個人的な資料整理のためにディレクトリー型の分類を開始したのがつい 10年前
の 1994年であったことはあまりに有名である。

 事業開始時のビジネスモデルは、ポータルサイトへアクセスするユーザーに
バナーと言われるような広告を提供する「広告モデル」であったが、これを起
点に、特に日本では最近では街で良く見かける Yahoo!BB といった「ブロード
バンドインフラモデル」へとその姿を変貌させている。

 日本のヤフーは孫正義率いるソフトバンクが筆頭株主で('04.3 末時点で 41
%)、売上高 760 億円、営業利益 412 億円(営業利益率 54 %)の超優良企
業へと成長しているが、このヤフーの一番の稼ぎ頭の事業セグメントは何かご
存知だろうか?

 それが、本日の記事にある「ヤフーオークション」、巷で「ヤフオク」と言
われる事業部門である。

【ヤフオクの売上高・営業利益・ヤフーの稼ぎ頭】
 ヤフーのセグメント毎の売上・営業利益を以下参照願いたい。ヤフー全体の
売上高 758 億円、営業利益 412 億円(営業利益率は実に 54 %!)に占める
ヤフオク(区分 1.)の売上高は 208 億円・構成比は 27 %、営業利益は 155
億円・構成比は実に 38 %にもなる。

(単位:百万円)
 事業区分 1.   2.   3.   4. その他
 連結*
 ---- ---- ---- ----   ---- ---- ----
 売上高  20,838 14,535 13,615 12,760 14,096 75,776
 構成比 27% 19% 18% 17% 19% 100%

 営業利益 15,480 11,192 9,797 7,965 2,703 41,211
 構成比 38% 27% 24% 19% 7% 100%

 *売上高消去額 -70、営業利益消去額 -5,929


 事業区分 主要サービス
 ---------------- ------------
 1. オークション事業 オークションサイトの運営
 2. 全社共通事業 「Yahoo! JAPAN」トップページ等への広告
             掲載売上、「Yahoo! プレミアム」の売上等
 3. リスティング事業 「Yahoo! 求人情報」「Yahoo! 不動産」等
             の情報掲載サービス、サイト登録サービス等
 4. Yahoo! BB事業 ブロードバンド関連総合サービス
 その他
ショッピング事業 オンラインショッピングサイトの運営
メディア事業 「Yahoo!ニュース」「Yahoo!ファイナンス」
等の情報提供サービス、「Yahoo!ムービー」
等のエンターテインメントサービス等
BS事業 企業ポータルサイトの構築支援サービス、
Webデザインコンサルティングサービス等

(出典):ヤフー株式会社第9期 (自平成 15年4月1日至平成16年3月31日)
     有価証券報告書

 私自身、ヤフー(日本)がインターネット上でオークションを開始した日(99
年の終わりか'00年だったと記憶している。)にヤフオクのトップページにアク
セスし、その出品件数を一つずつ数えた覚えがあるが(それだけ出品件数は限
られていた。)、当時現在の姿は想像もつかなかった。驚異的な成長力である。

【ヤフオクの自動車部門売上高・営業利益の推定】
 それでは、このヤフオクの中で、当コラムが特化している「自動車(車両本
体)」が占める割合はどの程度だろうか?筆者が独自に試算をしてみたところ、
ヤフオクの自動車部門の年間出品台数と売上高、営業利益は以下の通りとなっ
た。(詳細は末尾の【Appendix】を参照迄)

 ・年間出品台数 228万台
 ・売上高 7,367百万円
 ・営業利益 5,476百万円*

 出品台数の試算を後述の通り平均出品台数 5日という数字を使っていること、
再出品を考慮に入れていないことなどから必ずしも正確ではないかもしれない
が、228 万台という数字はオートオークションナンバーワンの USS の'04.3月
期の数字である 177 万台を大きく上回る水準となっている。

【オートオークション事業者との比較】
 ヤフオク(自動車)の各種指標を、上場しているオークション会社と比較を
してみると、以下の通り。(2004年 3月期)

                    (単位:百万台・百万円)
USS AN JAA Y!
 出品台数 1.77 0.296 0.637 2.27
 売上高 42,425 16,458 10,282 7,367
 営業利益 18,017 2,190 891 5,476

  注)AN:オークネット、Y!:ヤフオク(自動車)

 売上高では上場 3 社に見劣りするものの JAA の 7 割強、営業利益に至って
は USS に次ぐ 2 位の水準であると考えられる。

【売上高構成要素の比較】
 一般的にオートオークション事業者の場合、出品料、成約料、落札料の 3本
立ての手数料体系となっており、それぞれ 7 千円程度、平均落札率が 6 割弱
といったところが相場であることから、出品 1台当りの平均手数料は 1.4〜 1.
5 万円台とみて良いだろう。一方ヤフオクのそれは 3,234 円(3,234 円=73.
7 億円÷2.28 百万台)と低いレベルに留まっている。

 しかし、台数という意味では、全てをバーチャルで完結できるヤフオクは現
車オークションよりも簡単に集めやすい。(実車を集めるという意味では、駐
車場の問題や、現車を見れるかといった限界はある為、バーチャルの利点はこ
こにある。しかし、ヤフオクのユーザーとオートオークションのユーザーであ
る事業者がそれぞれに求めるサービス内容が異なるという事実も忘れてはなら
ない。)

【最大の差は営業利益率】
 売上高では、オークション事業者の提供価値が車両の保管、撮影、査定、デー
タの配信といった複数のサービスにより構成されるのに対して、ヤフオクでは
主にデータの配信に留まることから、手数料単価が低く留まっているものの、
営業利益(試算)の額は前述通り、USS に次いで 2 位のレベルである。

 これは、オートオークション事業者でも USS レベルになると 43 %にもなる
営業利益率が、ヤフオクでは実に 74 %と驚異的なレベルになっていることが
主因である。 USS:42%、AN:13%、JAA:9% に対して、ヤフオクは 74%。

 即ち、会場の土地・建物の確保などが必要なオートオークション事業者と比
して、ヤフーには、圧倒的なコスト競争力があるということであろう。

【ユーザーである自動車事業者がどう反応するか】
 ここまで見てきた通り、既にヤフーの自動車オークションは相当な規模に成
長している。また、この度の手数料体系変更は、今までの出品料であった 525
円 → 2,940 円とかなり挑戦的であるとも言えるが、オートオークションへの
出品料と較べても依然低い水準でもある。これは、前述通りヤフーとオートオー
クション事業者のそれぞれのユーザーへの提供価値は異なること、また差があ
るが故にヤフーではオークション事業者ほどにインフラ投資が必要となってお
らず、結果コスト面ではヤフーに軍配があがり、手数料水準も低く抑えられて
いるということが大きい。

 こうしたことから、筆者は今後のヤフーの自動車戦略を以下のように考える。

1.価格戦略
  ユーザーである自動車事業者が感じている価値提供の範囲内での価格面の
 調整を引き続き行っていくのではないか。今回はその一環である。

2.価値提供能力向上戦略
  現在、車両データのインターネットを使った配信とネット上での入札機能
 に特化しているヤフーだが、今後はその他の関連サービス提供を実施してい
 くのではないか。これら関連サービスは自動車事業者が通常のオペレーショ
 ンで必要とする経営インフラである決済やローンなどが当初は中心となるだ
 ろう。

3.アライアンス戦略
  提供価値を、現車を扱わざるを得ない領域まで広げようとしたときには、
 自社で完結することは難しくなる。その結果、現車オートオークション事業
 者との間で、アライアンス構築の可能性があるのではないか。現車オートオー
 クション事業者からしても、ヤフーの情報伝達能力・特に一般顧客へのリー
 チは魅力であろう。(事実、競合の楽天はオークネットと既に提携をしてい
 る。)

 一方、オートオークション事業者としては、これまでは業界内での競争に終
始していれば良かったところが、業界外である IT 業界からの挑戦を受けてた
たざるを得ない、という大きな環境変化(パラダイムシフト)が今後予想され
る。しかし、「取引場」が繁栄するかは決めるのは、飽くまでも「顧客」であ
る。その意味では、顧客(ユーザー)である自動車事業者のことを 1 番良く知
っているのはオークション事業者そのものであるのは間違い無い。

 今後ヤフーがどのようなサービス展開を打ち出してくるにしても、顧客であ
る自動車事業者が 1 番利用しやすい環境を如何に整えるか、という視点から着
実に自社の経営資源を最大活用していきながら、必要に応じて事業提携を模索
していくかがオートオークション事業者の進むべき道であることだけは間違い
無い。

【Appendix】
1)新料金体系
 本日取り上げた記事では、ヤフオクの自動車車体・バイク車体・トラック車
体・バス車体の出品料・落札料が 2005年 3月 21日(月) 0時より変更になっ
たというものだが、このうち、車両本体の手数料料金体系の変更は以下の通り。

    出品料 落札料
    変更前   525円 3,150円
    変更後 2,940円    2,940円*
    増減  +2,415円     -210円

 * キャンペーン期間中は 0 円。

2)ヤフオク自動車部門の数字・計算根拠
 新手数料体系(キャンペーン期間後)が前提。
 '05年3月18日にヤフオクの車両本体の出品台数を一つずつ数えた結果は以下。

 ・通常車    20,815台
 ・部品取り車  10,390台
 ・合計     31,205台

 平均出品日数はまちまちであり試算が難しいが、ざっと見ていると長くても
1 週間程度となっている模様。仮に平均出品日数 5日という前提にすると、年
間出品台数(延べ)は、約 31 千台x 365日÷5日=2,277,965台となる。

 台数を約 2.3 百万台として、平均落札率を控えめの 10 %と設定すると、

 ・出品手数料: 2,940円x2,277,965台=6,697,217,100円
 ・落札手数料: 2,940円x227,797台=669,721,710円
 ・合計手数料収入(売上高)=7,366,938,810円

 * 尚、営業利益算出には、ヤフー社のオークションセグメントの営業利益率
  を売上高に乗じた。

                        <長谷川 博史>

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