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長谷川 博史 執筆記事
 
 
 
弊社親会社であるアビームコンサルティング(旧デロイトトーマツコンサルテ
ィング)が、自動車業界におけるモノづくりから実際のチャネル戦略に至るま
で、さまざまな角度から提案していく。

 アビームコンサルティング ウェブサイト
  http://www.abeam.com/jp/

第 4 弾は、弊社副社長の長谷川博史が、ディーラーの現状、今後について 5
週に渡って紹介する。今回はその第2回にあたる。

第4弾『ディーラーの行方(2)』収益向上のための施策

             (日刊工業新聞 2004年08月11日掲載記事)

 新車需要の劇的な成長を期待出来ない環境下、ディーラーの収益構造は「新
車販売」一本槍から「新車販売」というプラットフォームを活用しながら各種
「周辺ビジネス」をアプリケーションとして展開する形へと変化していること
を前回述べたが、今回はプラットフォーム(新車販売そのもの)における「収
益向上の為の施策」を幾つか提示してみたい。

【固定費削減の手段としての店頭販売】

 訪問販売方式と店頭販売方式日本では新車を販売する際、ディーラーの営業
マンが商品カタログなどを持参してお客様の自宅などを直接訪問する「訪問販
売方式」が、現在でも全新車販売の 56.8 %を占めている。固定費の内訳とし
ての最大構成要素である人件費(固定費の 65 %を占め、新車関連の売上総利
益の絶対額を上回る)の大部分が新車営業マンに関わるものであるが、純粋な
販売活動に費やしている時間が、それ以外の目的のために費やしている時間
(移動、ご用伺い、雑談、集金や各種伝票の受け渡し等)と比して短い実態か
ら、現在では欧米のような「店頭販売方式」への移行が叫ばれている。

 確かに、日本のディーラーの新車台当り売上総利益は約 30 万円弱と他国に
較べて高水準にも関わらず、人件費を差し引いた利益はほぼ「ゼロ」であると
いう実態や、1 社当りの従業員数が過去 10年間でほぼ横這いであるという事実
(新車販売台数は▲6 %)、更に一人当たり人件費については寧ろ増加してい
る傾向を考えれば、販売手法の構造変換を図るべき時期に来ているのは間違い
無い。* 一連の数字の出典は、社団法人日本自動車販売協会連合会「自動車デ
ィーラー経営状況調査報告書」

【訪問販売の利点】

 しかし、「店頭販売方式」を実現する結果としてコスト競争力は強化出来た
としても、「営業マンの定期的な訪問を機に買い換えを促されるようなお客様
」、即ち訪問販売により買い換えを実施するお客様へのリーチは逆に失うリス
クも存在する。新車販売の大部分は買い換えが占めることを考えると、既存ユー
ザーの買い換えを如何に維持するか(顧客防衛率)が新車販売維持・増加を測
る KPI (Key Performance Index)の一つであり、この防衛率を維持・向上し
ながらも維持費である人件費を抑制するのが理想的であるため、単純に人件費
削減を実現しても、販売台数が大幅に減少してしまっては、意味が無い。

【CRM エンジンによる効率的な訪問販売】

 そこで、既存顧客の情報を有効活用しながら効率的にプロモーションを行う
為の CRM の取り組みに注目が集まる。具体的には、情報ツールを活用しながら
定期的に自社への入庫を促進し、顧客情報を維持・更新・車検時やローン完済
時等に確実に自社で買い換えてもらう為の一連のマネジメントプロセスを指す。

 このプロセスの中に前述の「訪問販売方式」を効率的に織り込めれば、顧客
防衛率の向上と人件費の抑制を同時実現可能と考えられる。

 しかし現実には二つの問題が存在する。一つは、「顧客属性情報の獲得・更
新の問題」。もう一つが「買取店などの専業店との競争」である。ディーラー
が顧客属性情報を定期的に更新しようと思っても、定期メンテナンスや車検を
専業として提供する競合の存在により、更新情報にはどうしても「ムラ」が生
じてしまう。また、買い換えのタイミングで仮に効果的なプロモーションを実
施出来たとしても、これまた「売却は取りあえず買い取り専門店で」、「その
後、ディーラーでどの新車を買うか選ぼう」、といった選択肢が存在する。

【個人リースの活用】

 こういった問題を解決する手法として、筆者は「個人リース・残価設定型ロー
ン」の導入による「CRM エンジン」の安定的回転と、「訪問販売方式」の効率
的な活用に、「顧客防衛率の向上」と「人件費抑制」の同時実現効果を期待し
ている。 日本ではまだあまり浸透していないが、個人リース(特にメンテナ
ンス付きリース)の導入効果としては以下のようなものが考えられる。

1.定期的なメンテナンスを自社に導くことが可能になる=CRM エンジン上の
  顧客情報を定期的に更新可能となる。
2.顧客の分割払い状況の把握が可能となり、買い替えを促す重要なタイミン
  グの認識が出来る。
3.リース満了時に、車両の所有権がディーラー(若しくはリース会社)に残
  ること、更に残価設定型であれば残価の清算が必要であることから、お客
  様は店舗に戻ってくる。

 この時に、買取や再リース(ローン)という選択肢の提供と共に、代替した
方が得な商品設計をすれば、買い換え促進の強力なツールとなりえる。

【アライアンスに基づく外部リソースの活用】

 上記施策の実現はディーラー個社が有する経営資源のみを活用しても難しい
為、当然自動車メーカーや金融会社等との綿密な協力が必要となる。何れにし
ても、ディーラーが利用する CRM エンジンに効果的なリース・ファイナンスプ
ログラムを埋め込むことが重要であろう。

                        <長谷川 博史>

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