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長谷川 博史 執筆記事
 
 
 
◆日産、日産車での死亡重傷事故の発生件数を2015年には1995年比で半減へ
 今月14日発売の高級セダン「フーガ」から新安全技術システムを全新型車に

                    <2004年10月07日号掲載記事>

 「モータリゼーション」を国毎の人口に対する自動車の保有台数が増加する
ことと定義した場合、米国などの先進国はこれが 100 %(一人 1台)に近い
モータリゼーションの進んだ国であり、モザンビークなど保有率が 0.1 %に
しかならない国は、まだモータリゼーションが進んでいない国と言える。

 一方、保有台数に対する死亡事故発生率というものは、一般的に保有台数が
増加するほど減少する傾向がある。国内における保有台数増加に伴う死亡事故
発生率でも同様の傾向がうかがえる。実際に 1970年の自動車 1 万台当り交通
事故死者数は 9.0 であったが、2002年には 1.1 へと大幅に減少している(警
視庁調べ)。

 こうした統計を見ると、一見モータリゼーションが交通事故死者数を低下さ
せるようにも思われるが、認識せねばならないのはこれが「発生率」であると
いうことである。

 即ち、全世界的に見れば自動車の数が増えるほど交通事故の「発生数」は増
えているのが実態であり、これは目をつぶってはならない事実である。

 また、自動車メーカーにとっては三菱自動車の例を見るまでもなく、自らが
製造、販売している商品そのものが「ユーザーに対する安全の約束」を守れな
いと消費者に判断された時点で、経営そのものに大きな打撃を与えかねない。

 つまり、今後の自動車製造・販売会社にとって安全を如何にお客様に提供す
るかは、日本の都市部のように交通手段が発達している「常に代替品の脅威が
存在するような地域」では特に、クリティカルな課題である。

 こうした状況下、お客様に対して「うちの車はそんなことない」とアピール
する方法は幾つもあるだろう。

 アクティブセーフティ(「予防安全」 ABS やブレーキアシスト等)、パッシ
ブセーフティ(「衝突安全」・ボディ構造を衝撃吸収型にしたり、乗客空間を
守る形にする等)、プリクラッシュセーフティ(「衝突直前安全」・車間レー
ダによる減速やブレーキアシスト等)、ITS 関連の安全技術(カーナビ等)と
いった領域において、自動車メーカー各社はそれぞれ独自の取り組みをして、
これを消費者に広告などを通じてアピールを行っている。

 しかし、自動車に乗る消費者から見て重要なことは何であろうか?

 そう、それはやはり自分が自動車に乗っていることによる交通事故の発生が
未然に防げることであろう。また、これが難しいのであれば、もし不幸にも事
故に遭ってしまった場合に、その「程度」がやり直しのきくレベルに抑えられ
ることであると考えられる。

 こうした取組みの重要性や実態については、以前このコーナーで加藤が述べ
ている(http://www/sc-abeam.com/library/kato/kato0024-1.html) ので重複
は避けるが、今回注目したいのは日産がその取組みに数値目標を設定したこと
である。今回、日産は「2015年をめどに日産車での死亡重傷事故の発生件数を
1995年の半分に減らす」と宣言した。

 単に「素晴らしい技術を以ってして車が自動的に事故を回避するようにしま
した」というだけでななく(勿論、それは素晴らしいことであるが)、その結
果として「事故の数やその被害をどの程度抑える気なのか」を自ら宣言して誰
もがその効果を測定できるように枠をはめたことが非常に頼もしい。

 曖昧な努力目標に留まらず、具体的で効果測定の可能な数値目標を掲げて日々
の企業活動を行い、その目標の達成度合いを数字で随時測定することで、活動
の方向性や手法の妥当性や効果を検証しながら、必要なら思い切った修正や活
動資源の再分配を行なって絶対に目標を実現していく、というプロセスや意気
込みが伝わってくる。

 目標を設置してそれを PDCA サイクルを元に実現させるプロセス自体は難し
いタスクである。しかし、その前提として重要なのが、目標として掲げる数字
の妥当性である。現状の延長線上にある簡単な数字では目標足り得ないし、逆
にどう背伸びしてみても届かない無謀な数字を置いたのでは早い段階で諦めや
無力感が支配してこれもまた目標足り得ない。背伸びしてジャンプすれば届く
かもしれない、でも今のままでは届かないというところ(Challenging enough
but achievable enough)に目標は設定されなければならない。

 そういった観点で日産の「2015年をめどに日産車での死亡重傷事故の発生件
数を 1995年の半分に減らす」という目標を見ると、前者の「目標として妥当で
あるか」については、「事故そのものの発生件数」を目標と掲げるといったこ
とは可能かもしれないが、充分妥当であると考える。しかし、後者の「目標が
チャレンジングなレベルか否か」についてはどうだろうか。

 警察庁の交通事故関連の調べを見ると以下の通りとなっている

   交通事故発生件数      761,789件('95)→947,993件('03)
   うち死亡事故件数      10,227件('95)→ 7,456件('03)
   うち重傷事故件数    73,672件('95)→ 71,023件('03)
死亡重傷事故件数計   83,899件('95)→ 78,479件('03)
参考:死亡重傷者数* 30,906人('95)→ 27,674人('03)
    *自動車乗車中の死亡重傷者数

 死亡重症事故件数は 8年間で 6% しか減少していない。(自動車乗車中の死
亡重傷者数も 10% の減少にとどまり、総事故件数で見ると 24% も増加してい
るのだ。)
 日産の目標である 1995年〜 2015年の 20年間で「死亡重傷事故の発生件数を
半減する」ためには、2004年以降12年間継続的に年率 5.1% ずつ死亡重傷事故
件数を減らしていかなければならない。
 筆者にはこの数字は、Challenging enough but achievable enough だと映る。
日産の健闘に期待するとともに他社にもぜひ頑張ってもらいたい。


                        <長谷川 博史>

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