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長谷川 博史 執筆記事
 
 
 
◆中国政府、ノックダウン車の輸入でも完成車の輸入と同等の税金を課す方針
CKDとSKDの生産方式について制限方法を明確に。KD車が市場から消滅か

<2004年09月03日号掲載記事>

 先進国・発展途上国を問わず、各資本主義国はリカードの比較優位論に基づ
き、「表向きは」自由貿易に向けて市場を開放していくことを是としていること
は、多くの人の見解が一致するところであろう。

 しかし、発展途上国から見れば、実際にある日これが完全に実践された場合、
例えば自動車の場合であれば先進国から大量の完成車が流れ込み、少なくとも
短期的には自国の労働市場に対して大きな影響を与えてしまうい、同時に、自
国の当該産業(例えば自動車産業)を発展にも繋がらなくなることから、「実
態」は「表向きの建前」とは異なるのも事実である。

 この為、途上国では完成車の輸入に比較的高い関税を課すことが多いが、こ
れだけでは完成車流入防止という「消極的」観点からの対応策でしかなく、
「積極的」な自国自動車産業の発展には繋がらない。よって、完成車の流入を
コントロールしながら、並行して先進国の自動車生産ノウハウを吸収しつつ、
国内雇用も確保していく施策を求める。

 KD 生産 * とは、このような環境下における折衷案であり、具体的には自動
車の主要な構成部品を木箱やコンテナなどに詰め込んだ「組み立てキット」を
先進国の完成車メーカーから輸入・自国で一部部品を調達のうえ、簡単な組み
立てを行う、というプロセスを経る。

 発展途上国からすれば、年々自国製品の購入比率を向上させるよう求めるこ
とで、自国製品を生産する産業の促進が可能であると同時に、組み立て作業な
どを行う労働力は自国の工員となることから、自国雇用の確保を実現すること
が可能になる。

 また、先進国からしても、KD 化することで高い関税を回避することが可能に
なると同時に、部品の全てを自国製の物とすることは難しくなるものの、技術
指導料などといった無形の資産を販売することも可能になる。

 * 記事には KD の内訳として、SKD と CKD の 2 種類が挙げられているが、
Semi-Knocked-Down、CKD とは Completely-Knocked-Down の略であり、一般的
には SKD はドライバーやスパナで組立が可能なもの、CKD は溶接が必要なもの
とされている。

 今回の記事では、「完成車の特性を構成する自動車部品の輸入管理方法」が
意見募集と修正の最終段階に入ったとして、完成車の特性を備える KD 車の輸
入に対して完成車と同等の税金を課すことを検討しているとのことだが、これ
は果たしてどのような意味を持つのであろうか?

 筆者自身は 5年間ほど海外の KD 工場の経営管理などに携わった経験がある
ことから、KD 生産方式に対して一つの見方をしている。

 それは、KD 生産の「単純な延長線上」に、完成車生産工場は無いということ
である。

 冒頭、発展途上国からすれば「 自国製品の販売先を確保すると同時に、雇用
の確保を実現することが可能になる」という 2 点については述べたものの、生
産ノウハウの移転については言及しなかったのはこのためである。

 筆者は KD 生産を通じて生産ノウハウが発展途上国に伝達されていくのは限
定的であると考える。即ち、デザイン企画や基本設計、更に期間部品の供給な
どの殆どが先進国のメーカーに残る形では、現地発のメーカーの台頭には結び
つきにくい。

 そのことを十二分に理解している中国(政府)は、表面上部品のように見え
ながらも、実際には現地で足される付加価値が少ない KD、特に SKD について
は、完成車と同じ関税を加えることを検討しているのであろう。

 これを別の側面から見れば、「中国はそこまで来ている」ということである。

 即ち、自国産業を何とか保護しながらも折衷案しか取り得ない発展途上国で
は、KD 生産は他に選択肢の無い方式であるが、「中国はそうした後進国ではな
い」、ということを「宣言」しているのだ。

 この「宣言」は、今後の中国自動車産業の発展に向けた一つのマイルストー
ンであり、更なる成長に向けた踏み台であると言えよう。

                        <長谷川 博史>

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