仕事で成果を出すことにも自分を輝かせることにもアクティブなワーキングウー
マンのオンとオフの切り替え方や日ごろ感じていることなど素直に綴って行き
ます。また、コンサルティング会社や総合商社での秘書業務やアシスタント業
務を経て身に付けたマナー、職場での円滑なコミュニケーション方法等もお話
していくコーナーです。
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第48回 『おじいさんに救われた一日』
「おねえさん、ちょっとお話してもいいですか?」とナンパされました。と
言っても、ナンパされた場所は病院の待合室。しかも、ナンパしてきたのは、
私の祖父が生きていたとしてももうちょっと若いだろうなぁと思うほどの、と
てもご高齢のおじいさんでした。
先週、久々に大風邪をひいてしまったんです。こんなにひどい風邪は何年ぶ
りだろう???と思い出せないくらいです。熱と咳にうなされて、夜、ベッド
に入っても苦しさの余り眠れないほどでした。今まで、少し熱っぽいなぁとか、
ちょっと喉が痛いなぁとか、少し鼻が出るなぁというような小風邪の類はしょ
っちゅうひいていました。でも、そんな時は市販の風邪薬とビタミン C のサプ
リメントを数日飲み続ければ、風邪にまで至らずに治っていたんです。しかし、
今回の風邪菌は、私のそんな風邪予防策が効かないほど強烈でした。
しょうがなく、会社を一日休んで、家の近くの病院に行きました。そこは、
近所でも評判のクリニックで、いつ行っても大混雑していて長い時間待たされ
ます。午前中は事前に予約を入れている人が優先されるので、朝から行っても
午後から行っても、結局診てもらえるのは午後になってしまうことを私は知っ
ていました。だから、最初から午後の診察時間に合わせて行ったのですが、行
ってみると案の定、待合室のソファの空きがないほど患者が待っていました。
私がそのクリニックが好きな理由は、先生(男性)が明るく元気いっぱいな
人なので、診てもらうだけでも病気が治るような気がするから。というのは表
向きの理由で、実はそれよりも大事な裏の理由があります。それは、先生が、
あまりカッコよくないところが良いのです。(先生、ごめんなさい!)体調が
悪い時って、顔色は悪く、目はうつろ、目の下にクマはでき、おまけに鼻のか
み過ぎで鼻の下は赤くなり、きっとすごい形相になっていると思うんです。そ
の上、気力がなくてお化粧もほとんどせずにいます。そんな姿は、カッコいい
人には見られたくないというのが女心というものです。
そんなすごい形相で、まるでこの世の果てと言わんばかりの私を見て、おじ
いさんはきっと私に声を掛けずにはいられなかったんですよね。
「あそこに飾ってある絵、どこの景色だかわかりますか?」
「う〜ん・・・。見たことがあるような気もしますがわかりません。どこで
すか?」
「あれは、ヴェネチアなんですよ。つい先日まで旅行で行っていました。
二度目だったんですが、とても素晴らしいところです。あなたは行ったこ
とがありますか?」
待合室には、大きな風景画が飾ってあったんです。おじいさんに言われるま
で、私は全くその絵に気づいていませんでした。病院の待合室にとても似合う
優しい色使いのヴェネチアの町を巡る水路と橋の絵だったんです。
ひとしきり、おじいさんとヴェネチアの話で盛り上がっていると、おじいさ
んは受付から名前を呼ばれ、私に笑顔で会釈をしながら診察室に入って行きま
した。
私はおじいさんとの会話の後、自分の番を待ちながらヴェネチアを訪れた時
のイタリア旅行を思い出していました。ローマでは、名画「ローマの休日」に
出てくる所へ行って主人公のアン王女と同じように真実の口に手を入れてみた
り、スペイン広場でジェラートを食べたりしたよなぁとか、ナポリでは本場の
ピザを食べてあまりの美味しさに感動したよなぁとか。
そんな楽しい思い出のお陰で、苦痛な待ち時間がとても短く感じました。待
っている間に少し気が楽になってきたんです。それに、おじいさんの笑顔を見
たら、私が小学生の時に亡くなった祖父との思い出が脳裏に浮かび、なんだか
普段の生活に追われていると忘却のかなたへ送り込まれてしまいそうな温かく
懐かしい思い出たちがよみがえってきたのです。私はあの日、おじいさんの優
しい気遣いと笑顔に救われた一日になったのです。
風邪をひいたお陰で優しいおじいさんと出会えたことは良いことでしたが、
でも、会社を一日休み、周囲の人に迷惑を掛けたことも事実です。それに、つ
くづく、健康じゃないと仕事ってできないんだなぁと痛切に感じました。大風
邪をひいたのは、「もうちょっと自分の身体を大事にしなさいよ」という神様
からの黄色信号だったのかもしれないなぁと思い、ちょっと反省しています。
みなさんが、毎日仕事に邁進できるのも、また、好きな趣味に没頭したり家
族との楽しい時間が過ごせるのも、健康な身体があってこそです。これから秋
が深まり、冬の到来と共に空気の乾燥で風邪が流行る時期です。みなさんも、
どうぞ風邪などお召しになりませんように。
<佐藤 彩子>
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