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佐藤 彩子 執筆記事
 
 
 
仕事で成果を出すことにも自分を輝かせることにもアクティブなワーキングウー
マンのオンとオフの切り替え方や日ごろ感じていることなど素直に綴って行き
ます。また、コンサルティング会社や総合商社での秘書業務やアシスタント業
務を経て身に付けたマナー、職場での円滑なコミュニケーション方法等もお話
していくコーナーです。

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第28回 『今ある自分に感謝する』

 よく、「目は口ほどにものを言う」と言います。目を見ると、その人の気持
ちがよくわかります。口では穏やかなことを言っていても、目を見るとなんだ
か怖い目つきの人っていますよね。口は、いくらでも嘘をつくことができます
が、目は嘘をつきませんから。でも、そんな「口」を使ってちょっと変わった
方法で、自分の気持ちを表現している素晴らしい方がいるんです。その人の
「口」は、決して嘘をつかない、そして人一倍、表現力豊かな「口」なんです。

 その方は、詩人でもあり画家でもある星野富弘さんといいます。星野さんは、
以前は中学校の体育教師でした。クラブ活動中の不慮の事故により頚椎に損傷
を負い、手足の自由ばかりか、肩から下は全て麻痺という過酷なハンディを負
ってしまいます。一時は生きる希望を失くし、現実を受け止められずに自暴自
棄になっていました。しかし、入院中、教え子からもらった励ましの手紙の返
事を口に筆をくわえて書き始めたことがきっかけで、文字(詩)と絵が一緒に
なった「詩画」の形へと発展し、それを書くことに生きる希望を見出すように
なるのです。想像がつくと思いますが、口に筆を加えて文字や絵を書くことは、
気の遠くなるような話です。でも、星野さんはそれを克服し、人々を惹きつけ
る素晴らしい芸術を生み出すようになるのです。

 私は一度、星野さんの作品の展覧会に足を運んだことがあります。身近な草
花や野菜の水彩画に詩が添えられていて、「生きる喜び」や「生命の尊さ」を
綴り、鑑賞しているうちに勇気をもらえる作品ばかりで感動の連続でした。ま
た、星野さんの純粋な心と愛に満ちた生活が伝わってくる温かい作品にとても
心が洗われました。

 そんな星野さんの作品は、彼が人生最大の「逆境」を乗り越えていく中で、
人間の弱さに気付き、今までは見えていなかった世界が広がり、それを素直に
表現した詩画だからこそ、私をはじめ多くの人に感動を与えるんだと思います。

 「仕事が上手く行かない」、「恋人に振られちゃった」なんていう逆境は序
の口で、人生最大の逆境は、「生命の危機」です。逆境を乗り越えると人間は
成長しますが、自分が人生最大の逆境「生命の危機」に瀕した時、それを乗り
越える勇気があるかと問われれば、みなさんはどうでしょうか。星野さんのよ
うに人生最大の逆境を乗り越え、それをバネにして、成功人生をスタートさせ
ることができますか?私はそんなに強い人間じゃないので、「NO」と答えてし
まいそうです。少なくとも、前向きなことは考えられないと思います。

 最近、テレビ番組などのコメンテーターとしても有名な、ある精神科医に取
材をする機会がありました。その時に、「自分に対して厳しくなりすぎないこ
とはストレスを溜めない秘訣として大事だ」というお話を伺い、それがとても
印象に残ったんです。私は、上を目指して「目標」を掲げ、その「目標」を達
成することばかりを考えていたような気がしたからです。

 その方は私に、「東京で、しかも都心にある会社に、毎日来て、働いている
ことだって、実は十分すごいことなんですよ」ともおっしゃっていました。要
するに、「今ある自分の状況に感謝する心掛けも必要だ」ということです。私
は、はっとさせられてしまいました。なぜなら、私はそんなことに感謝したこ
となんて一度もないからです。感謝どころかむしろ、「会社が都心にあるせい
で、通勤が大変でイヤだなぁ」とか、「朝、早起きをしないといけないからイ
ヤだなぁ」など、文句ばかり言っていたような気がします。

 さきほどの詩画家の星野さんが乗り越えた人生最大の逆境を考えたら、毎日、
息をして、自由に歩き、電車に乗り、仕事をし、手で文字を書き、食べたいも
のを食べ、会いたい時に友達と会い、好きな人と自由に恋愛をする・・・そん
な私が今までは当たり前のことと思っていたことにも感謝しないといけないの
です。

 また、がむしゃらになっている時って、前を向きっぱなしで視野が狭くなっ
ているせいか、気付かぬうちに周囲が見えなくなっていることが多いようです。
向上心を持ち、一生懸命になって目標に向かって前進することも大事ですが、
たまには、自分が歩いてきた道を振り返って、「ここまでできた!」と、これ
までの道のりを認めてあげ、それを可能にしてくれた周りの人たちや環境に感
謝することも大事なんですね。それが、不平や不満ばかり言う人にならないコ
ツ、仕事でストレスを溜めずに前向きなパワーを生み出すコツにもつながるよ
うな気がしています。

                            <佐藤 彩子>



















 
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