『地域間でのリソース共有の必要性と軽サプライヤへの影響』
◆三菱自動車の益子社長、軽自動車をベースに「世界戦略車」を開発へ
<2008年03月16日号掲載記事>
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【軽自動車技術を海外向け車種へ】
三菱自動車の益子修社長は、新聞社のインタビューに答え、軽自動車をベー
スに小型乗用車と小型トラックを開発し、世界販売の柱にする方針を明らかに
した。低燃費・低価格の小型乗用車は 2011年にも欧州で発売。小型トラックは
日産自動車と共同開発し、12年にアジアに投入する。
小型乗用車は排気量 1〜 1.1 リットルで「世界戦略車」と位置づけて開発を
行う。価格は三菱が欧州で販売する最も安い小型車「コルト」(150 万円台か
ら)より安くする。欧州連合(EU)諸国で 12年から環境規制が強化されるのに
あわせて発売し、日本を含む世界へ販売を拡大する。
また、小型トラックは、三菱が軽自動車の OEM 供給をしている日産と開発。
需要が拡大する東南アジア諸国を中心に、12年に発売するとのことである。
軽自動車自体は日本独自の規格であり、これまでも三菱自動車が軽技術を海
外向け車種に活用するという報道はなされていたものの、今回の報道により具
体的な投入時期や位置付けが発表されたことになる。
三菱自動車の 2006年度国内販売台数における軽自動車比率は 70%弱まで上
昇しており、軽専業を除いた乗用車メーカーの中でも最も高い。この数字を踏
まえれば軽自動車で培った技術を海外向けの車種にも活用できないかというの
は自然な目つきだろう。
【国内販売の低迷と軽自動車】
昨今の低迷する国内市場の要因を説明する際に、消費者が自動車を単なる移
動手段と捉え、それゆえに安いもので十分という発想を持つようになったこと
はよく語られるところであるが、それを裏付けるように乗用車販売台数に占め
る軽乗用車の割合もここ数年上昇してきている。
実際に過去 3年の数字を見てみても、29.21 %(05年)→ 32.48 %(06年)
→ 32.89 %(07年)となっており、06年以降は国内で販売されている乗用車の
3 割以上が軽という状況となっている。
しかしながら、いまや軽の販売台数が順調に伸びているというわけでもない
ようである。軽乗用車販売台数の前年比を見てみると、101.1 %(05年)→ 108.
7 %(06年)→ 96.0 %(07年)となっており、2007年は前年に比べて、軽乗
用車の販売台数が減少しているのである。
にもかかわらず、先ほど紹介した軽比率が上昇しているということは、軽以
上に登録乗用車が落ち込んでいるということである。実際、登録乗用車販売台
数の前年比を見てみると、99.0 %(05年)→ 93.2 %(06年)→ 94.2 %(07
年)という状況であり、過去 3年にわたり縮小を続けていることがわかる。
また、軽乗用車の 2007年の販売台数が前年比で減少しているということは前
述したが、この要因としては、単に市場のニーズが変化したということよりも、
各自動車メーカーの考え方、施策がもたらした部分が大きいと思われる。
ホンダこそ軽自動車生産を委託する八千代工業を子会社化しコスト低減を図
り、現状、販売の41.3%を占める軽自動車で稼ぐ戦略を打ち出しているが、そ
れ以外の自動車メーカーは軽自動車の収益性が低いことを理由に、販売台数に
占める軽自動車の比率を抑え、登録乗用車の比率を向上させようという方向に
動いている。
そういった考えに基づいた各社の施策が 2007年の軽乗用車の販売台数減少に
も影響を与えていると思われる。また、それだけ各社とも国内事業の収益性が
課題となっていることの裏返しでもあるだろう。
【全社的なリソース共有の必要性】
このように国内市場の低迷により、国内事業の収益性が問題視されるように
なってくると、各自動車メーカー内における各地域間の力学や資金・開発人員
といったリソースの配分等にも影響を及ぼすようになることは想像に難くない。
特にリソースが潤沢でない下位メーカーにとってその傾向は顕著であり、全
社的な観点から見てそれほどリターンが期待できない国内市場に投入するリソー
スを確保できず、結果的に国内専用車の開発も難しくなってきているという悩
みも聞く。
しかしながら、前述したように市場というのは各自動車メーカーの施策によ
って形成されるという部分もある。各社がリソースを投入しないために市場が
縮小していき、そのためにさらにリソースを投入しづらくなっていくという負
のスパイラルに陥ってしまう危険性もある。
それを回避するためにはリソースの効果的な活用という観点から、上手く地
域間でリソースを調整する必要性があり、可能であればリソースを共有してい
くという発想が必要だろう。
これまでリソースの共有というと海外市場を想定した車種を国内市場にもロー
カライズして投入するというパターンが増加してきていたが、今回の報道のよ
うにこれまで国内専用車として位置づけられてきた軽自動車の技術を海外向け
の車種に活用するという逆の方向性も十分に目的にそぐうのではないだろうか。
今後の世界の自動車産業を考えた場合、今回の報道にもあった EU における
環境規制強化に伴うリッターカーの需要に加え、タタ自動車のナノが発表され
たことも追い風となり、今後、低価格帯の自動車が世界の自動車産業において
トレンドとなってくる可能性もある。
そういった局面においては、軽で培った技術が海外向け車種に適用できる部
分も多いのではないかと思われ、また、それは新興国でプレゼンスを高めるス
ズキがこれまで実践してきたことでもある。
【サプライヤへの影響】
また、上記のように日本の軽技術をベースに海外向け車種の開発が進められ、
それが一般化してくるのであれば、これまで国内での軽自動車生産に対応して
いたサプライヤが海外に進出することで、新たな事業展開を行う機会も出てく
るのではないだろうか。軽自動車をベースにしているため、国内において開発
の段階から入り込めるという優位性も存在する。
これまで日系サプライヤは海外に進出した際に人件費が低い中国やインド等
の新興国のサプライヤに対抗するため、高付加価値で勝負するというのが通説
となっていたが、今後、低価格帯の自動車が世界規模でのトレンドとなってき
た場合、安い値段で部品を調達したいが、現地のサプライヤでは少し不安とい
う、いわば中間帯のニーズが出てくる可能性も考えられる。
一般に、低価格帯の自動車の普及は日系サプライヤにとって脅威と捉えられ
がちであるが、自社の強みをいかして脅威を機会に変えるという発想が今後は
必要であろうし、今回の報道はそんな発想をするきっかけになるのではないだ
ろうか。
<秋山 喬>
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