『オンデマンド化する社会』
◆トヨタ、カーナビの最新地図を必要な部分だけ自動更新する新サービス
<2007年02月08日号掲載記事>
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【マップオンデマンドの概要】
トヨタは、カーナビ用地図の自動更新を可能とし、利便性を大幅に向上する
ために、更新エリアを設定し、そのエリア内の変更道路データのみを配信する
地図差分配信技術「マップオンデマンド」を、世界で初めて開発した。
「マップオンデマンド」は、全国の高速道路・有料道路、カーナビに登録し
た自宅及び設定した目的地周辺の道路変更部分のみを、携帯電話網などを通じ
て、カーナビに配信するものである。これにより、地図データは短期間で自動
更新され、高速道路・有料道路は新規開通後約 7日、その他の道路も、変更情
報が収集され次第、逐次、更新が可能となる。
現在のカーナビ用地図は、変更情報を年 2 回収集し、全国一括で編集・更新
しており、道路の変更をすぐに反映することができなかった。今回の新技術に
より、利用者は、常に更新された地図で、カーナビゲーションの経路探索・案
内を利用できることになる。
この「マップオンデマンド」は、アイシン・エィ・ダブリュ、ゼンリン、デ
ンソー、トヨタマップマスターと共同で開発したもので、今春以降発売される
新型カーナビから、G-BOOK の新サービスとして順次展開する予定である。
【オンデマンド化とは】
マップオンデマンドの名称にも用いられているオンデマンドは昨今のニュー
スにおいてよく目にするキーワードでもあり、今回はそれについて考察してみ
ようと思う。
オンデマンドとは消費者が好きなものを、好きなときに、好きなだけ利用で
きることを指し、オンデマンド化とはそのような消費者の要求に基づいてサー
ビスを提供するような形態にビジネスを変革することである。
言い換えれば、消費者が事業者に対し、自発的に要求を出し、自分のために
カスタマイズされたサービスを享受することができる消費者主導型の市場、社
会である。
今後、既製品の大量生産、画一的な消費者による大量消費、そしてマスメデ
ィアの活用に代表される事業者主導の工業化社会から本格的に消費者主導型社
会へと変化していくにあたって、オンデマンド化は重要なキーワードになって
いくだろう。
現在、WWW やメールをはじめとするインターネット上のデータ配信は、ほと
んどがオンデマンドで行われていることになるが、それに対し、既存のマスメ
ディア、例えばテレビ放送、は、いつどの番組を流すかが視聴者の意向や要求
とは関係なく決められるため、オンデマンドとは言えない。
また、ケーブルテレビ網や光ファイバー網を用いて、個々のユーザの要求に
合わせて、見たいときに見たい映像コンテンツ、映画を放送する「ビデオオン
デマンド」などもオンデマンド化の一つであり、消費者の支持を集めつつある。
そして、今回のマップオンデマンドの場合も、自分の欲しい範囲の地図デー
タを携帯電話網を通じて、欲しいときに短時間で入手することが可能になる点
でオンデマンド化の一事例ということができる。
従来どおり、全国の地図データ全てを配信の対象とすると、データサイズが
大きく、通信時間と費用が多くかかるところをオンデマンド化することにより
解決したわけだが、実際、消費者は全国の地図データを必要としているわけで
はないし、従来から変更があった道路を把握することができればいいわけなの
で、消費者の支持を集めるのではないかと考える。
【オンデマンド化の成立要件】
今後の社会の変化を考えるうえで、消費者個々の要求に合わせたオンデマン
ド化は時代の潮流にも思えるが、世の中の全ての製品、サービスがその方向に
向かうわけではなく、オンデマンド化が成立するためには大別して 2 つの要件
があると思われる。
まずは消費者側でオンデマンド化により利便性、楽しさが向上しなければな
らないということである。
テレビ放送などは典型的だが、これまでずっと事業者から与えられることに
慣れてしまっていて、受動的な態度でいることが当たり前になってしまってい
る消費者はいきなり目の前に様々な選択肢を見せられても、自発的にその中か
らに選択し、行動することを面倒だと感じてしまうことが想定される。
そのため、オンデマンド化には消費者が面倒だと思う気持ちを上回るだけの
利便性、楽しさの向上が必要になるのである。
また、もう一方では、事業者側でオンデマンド化により経済性が向上しなけ
ればならないということである。
現在の経営論の中の代表的な法則の一つである規模の経済の法則に基づいて
行動することに慣れてしまった事業者は消費者ごとにサービスをカスタマイズ
して提供することをを割に合わないと感じてしまうことが想定される。
そのため、オンデマンド化には事業者が割に合わないという気持ちを上回る
だけの経済性の向上が必要になるのである。
そこで、オンデマンド化が成立するためには、上記の要件を両立させる仕組
みを事業者側が提供できるかどうかがポイントになってくるのである。
今回のマップオンデマンドのケースを見てみると、消費者の立場からすると
わざわざ地図データを更新するために、販売店に行く手間が省け利便性の向上
につながるし、事業者側でも長期的に見ればデータ更新に費やす時間、工数が
削減され経済性の向上につながることになるだろう。
【自動車のオンデマンド化】
今回のマップオンデマンドに代表されるように、一般にオンデマンド化はソ
フト、サービスの領域が対象になることが多いが、製造業である自動車産業自
体はオンデマンド化時代にどのように対応していったらよいのであろうか。
前述したとおり、オンデマンド化は規模の経済とは相容れない点があるが、
一方で、日本の自動車産業は必要なものを、必要なときに、必要なだけ適切に
生産するという JIT 生産方式を早くから採用しており、それは今日のオンデマ
ンド化の概念にも通ずる考え方である。
その考え方を消費者視点で更に推し進めていく際には二つの方向性があるだ
ろう。
まずは、消費者の好きなものを、に該当する製品そのもののオンデマンド化
である。
この方向性にはプラットフォーム共有化によるモデル数の増加や、BTO (Build
to Order)の採用による消費者の好みにあわせた受注生産が考えられ、既に業
界における実際の取り組みとして行われている。
また、消費者の好きなときに、好きなだけ、に該当する自動車の使用方法、
付き合い方のオンデマンド化も考えられる。
こちらは、個人レベルでは自動車が所有の対象であり、サービス業化がそれ
ほど進んでいないこともあり、目立つ取り組みとはなっていないが、個人リー
スやレンタカー、カーシェアリングなどが該当することになる。
数年前に BTO が話題となった際には、消費者が選択する楽しさよりも、面倒
を感じるケースが多かったとも聞く。今後、オンデマンド化が進展していくか
どうかは、消費者が面倒だと思う気持ちを上回るだけの利便性、楽しさを提供
できる仕組みを事業者側で用意できるかどうかにかかっているといえるだろう。
<秋山 喬>
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