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秋山 喬 執筆記事
 
 
 
◆トヨタ、販売3系列で「VI (ヴィジュアル・アイデンティティー)」変更へ

                   <2005年02月09日号掲載記事>

 2005年 8月より日本国内で展開されるレクサスチャネルと並行して、トヨタ
は国内の既存チャネルの改革も進めている模様である。

 今回、紹介したニュースは販売チャネルごとのアイデンティティーを強める
ことを意図したものと思われるが、2月 1日にフルモデルチェンジしたコンパク
トカー「ヴィッツ」の車体の前面にネッツ店の「N」をモチーフにしたシンボル
マークが、初めて採用されたというのも同様の動きと捉えることができる。

 「ネッツ店」は、昨年5月に販売網の再編で発足した新しい販売チャネル
であり、若年層や女性層をターゲットにしている。ヴィッツのフルモデルチェ
ンジに際し、トヨタのウェブサイトでは下記のように紹介されている。

 Netz は「fun ・ fashionable」をキーワードに、お客様ひとりひとりのライ
フスタイルに、新しい価値を提案する個性的なクルマづくりを目指していきま
す。そのラインアップの象徴として、新型ヴィッツから、Netz の「N」をモチー
フにした新しいエンブレムを装着していきます。

 ちなみに、車体の前面には「N」をモチーフにしたシンボルマークが採用され
ているが、車体の背面にはしっかりとトヨタのロゴが入っている。

 日本における販売チャネルを見てみると、現在、販売チャネルとブランド
(モデル)との間に、整合性の取れた関係が構築されていたとは言いがたくチ
ャネル間の併売も行なわれている状態であるが、トヨタの最近の販売チャネル
政策を見ると、レクサスに代表されるようにチャネルごとのブランドを意識し
たものになってきているように思われる。

 これらは販売チャネルを本来あるべき姿へと回帰させようとする動きと捉え
ることができるだろう。

 というのも、元々、自動車メーカーが複数チャネルを持った目的というのはチ
ャネルごとに異なる商品をラインアップし、商品の差異性、メッセージを強調
し、そうすることで売上増につなげようとするものであったはずである。

 しかし、それを維持していこうとする際にチャネル別に割り当てる商品ライ
ンアップの不足、国内新車需要の落ち込み、また、割り当てられた車種の違い
により生じた各ディーラー間の経営格差等の問題により、現在のようにチャネ
ルごとのアイデンティティーが曖昧な形になってしまっていた。

 このように複数チャネルを効果的に機能させるためにはいくつかの必要条件
が存在することは明らかであるが、今回、国内販売チャネル改革を手がけよう
とするトヨタはそういった必要条件をクリアできる状態になりつつあるのでは
ないかと思われる。

 必要条件としては、まず第一にチャネル別に割り当てるための差異化された
製品の開発が可能であり、車種ラインアップが豊富であることが挙げられる。
これには昨今の新車開発期間の短縮や、多品種小ロット生産への対応が大いに
寄与しているものと思われる。現在トヨタの製品開発サイクルはプラットフォ
ームの共有化や製品開発プロセスの見直し等の施策により、12 ヶ月程度まで
短縮されているし、派生車に頼らない独自モデルの開発・生産のブレークイー
ブン台数も下がってきている。

 次に、いい意味で、チャネル間の併売による売上増が期待できない状態にな
っているということが挙げられる。これはそれぞれのチャネルのディーラーが
日本国内にあまねく広く配置されていて初めて可能になることである。乱暴な
言い方をすると、ある街にレクサス、トヨタ、トヨペット、カローラ、ネッツ
と各店舗、揃っているのであれば併売を辞めたとしてもメーカーから見た売上
が急落することはそうそうないだろう。
(ここではあくまでチャネルレベルの話であり店舗レベルの話は省略する。)

 背景には顧客側が自ら欲しい車種を求めて店舗を訪れるようになったことと、
供給側の効率性の解決策として訪問販売から店舗販売といった販売手法の変化
が進みつつあることにより、チャネル間の顧客獲得競争による総体的な売上増
が見込めなくなりつつあるという事情も存在する。

 また、当の販売チャネルであるディーラーのケアも必要となる。以前は割り
当てられた車種によって経営格差が生じるなど、ディーラー側からも不満が出
たが、割り当てる車種の工夫やチャネル別にインセンティブ体系を変えるなど
して、これに対応していく必要がある。

 上記のような必要条件が満たされて初めて複数チャネルを効果的に機能させ
ることが可能となり、チャネルごとのアイデンティティーというものも明確に
なる。

 しかし、チャネルごとのアイデンティティーが明確になるにつれて懸念され
る点も生じてくる。それはブランドが分散化することによるトヨタとしてのア
イデンティティーの喪失、である。

 チャネルごとの色合いを濃くしたとしても、一方でトヨタとしての統一感は
品質の高さ等の合言葉により維持されなければならない。そして、ヴィッツの
背面につくトヨタマークはその象徴とも取れる。

 今後、トヨタは 2010年世界シェア 15% の目標に向け、海外での販売も更に増
加させていくことになる。そのためには数多くのモデルをある国へ投入すると
いう状況も発生してくるだろう。

 トヨタはグローバル化の進展につれ、生産の観点からは日本をベストプラク
ティスとして全世界に展開してきたが、同様に販売のベストプラクティスもま
ず日本において構築しようとしているのかもしれない。

                        <秋山 喬>

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